さっきの店の奥にきれいな喫茶店があるから、と急いで引き返しドギマギしながら円山町のホテル街へ向かいました。
「あれ、どこだったかな、つぶれちゃったのかな」と我ながらヘタな芝居をし、自壁のホテルの前で「ここでいい?」と顔を見ると、「人が来るじゃない」と彼女のほうから先に入っていきます。
壁にシュールレアリスムの絵が飾ってある静かな部屋で、トイレに行く気配がないので「だいじょうぶ?」と聞くと、「まつたく、お馬鹿さんなんだから」と年上の女ぶった言葉。
彼女はキス魔で、シャワールームでもベッドでもソファーでも話が途切れると唇を突きだしてきました。
クルクルよく回る舌とビール臭い息はよく覚えています。
この日は、二回性交しました。
後で聞いたところ、彼女は、東京に来て出会い系サイトを利用するのは週に一回、今まで二人に会ったそうです。
一人は、二十代半ばの男。
その時は、出会い系サイトで知り合った男性から会うなリホテルに誘われ、こわくて逃げたそうです。
二人目の出会い系サイトで知り合った五十過ぎの男は紳士だったけど、お金を出すから愛人になって欲しいと真剣にせまられ、馬鹿にされているようで泣いたとか。
あと一人の出会い系サイトで知り合った男性はサラリーマンで、お茶を飲んでいると、お金を出すからホテルヘ行こうと誘われ、いやな気持ちになって帰ってきたとのことでした。
「電話で会った人としたのは初めて」と小さな声で私に告げました。
私はお腹の出はじめた風采の上がらない中年男。
どうして? と疑間が湧きます。
彼女の答えは、「話をちゃんと聞いてくれたから」でした。
「20代の人が希望だったけど、いなかったの。それに店の人がいい感じの人です、と言ってくれたから」と私の横でうなずきながら教えてくれました。
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